休職者の復職を迎える職場へ|上司・同僚と共有すること、しないこと

休職していた社員の復職が決まると、受け入れる職場には別の迷いが出てきます。誰が窓口になるのか。仕事を誰がどう分けるのか。同僚には何を、誰が、どこまで伝えるのか。調整はいつ見直すのか。本人の復職の手続きが進んでいても、受け入れる側の準備が決まっていないと、復職後の最初の数週間は、本人にも職場にも負担が大きくなりやすいです(この記事の整理です)。
この記事では、受け入れる職場が復職の前後に整えることを、4つに絞って整理します。業務分担、相談窓口、共有する情報の範囲、調整を見直すタイミングです。
休職から復職までの流れ全体は「休職から復職までの流れ|人事の対応チェックリスト」(https://www.occulabo.co.jp/corporate/2601/)、休職中の連絡は「休職中の社員への連絡|窓口・内容・本人との合意・記録の決め方」(https://www.occulabo.co.jp/corporate/2730/)で扱っています。この記事は、受け入れる職場の準備に絞ります。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下、手引き)の考え方を土台にしています。個々の労務判断は、社労士・産業医などの専門家にもご相談ください。
受け入れる職場の役割を、先に分ける
手引きは、職場復帰支援で、管理監督者、人事労務管理スタッフ、産業医等がそれぞれの役割を担うとしています。管理監督者は、職場環境等の問題点を把握して改善し、就業上の配慮を実施し、復職後も注意深く観察します。人事労務管理スタッフは、配置転換・異動、勤務制度の変更などの配慮と、手続きの調整を担います。産業医等は、全過程で専門的な立場から支援し、主治医と連携します。最終的な復職の決定は、事業者が行います。
受け入れる職場では、この役割を担当者の名前にしておきます(この記事の整理です)。
- 上司:仕事の割り振りと、日々の様子の観察。
- 人事:勤務制度の手続き、記録、情報の管理。
- 産業医等(選任している場合):医学的な意見の確認と、上司や人事からの相談への対応。
- 本人:困りごとの申告と、情報の共有範囲への同意。
業務分担:受け入れる側の負担を偏らせない
業務を減らした分を他の人が引き受ける場合もあれば、延期・中止したり、進め方を変えたりできる場合もあります。誰かが引き受ける場合に、引き受ける人を決めないままにすると、特定の同僚に負担が集中し、職場の協力が続きにくくなります。手引きは、復帰を受け入れる管理監督者や同僚に、過度の負担がかからないよう配慮することを挙げています。復職前に、次の4つを決めておきます(この記事の整理です)。
- 引き受ける人と期間:他の人が引き受ける仕事がある場合、誰が、いつまで、どの仕事を引き受けるか。延期・中止・進め方の変更で対応する仕事も、あわせて決める。
- 戻す順番:どの仕事から本人に戻すか。順番の理由を、仕事の事実で説明できるようにする。
- 繁忙期の扱い:繁忙期に重なる場合の、追加の分担。
- 偏ったときの申し出先:引き受ける側が負担を感じたとき、誰に伝えるか。
軽減の度合いは、状況に合わせて見直します。手引きは、過度な業務軽減がかえってストレスを高める可能性があること、労働負荷は段階的に元へ戻す配慮が重要であることを示しています。これは手引きの記載の紹介であり、必要な配慮を減らす意味ではありません。実際の調整は、本人の希望、医学的な意見、仕事の条件に合わせて決めます。
相談窓口:本人と、受け入れる側の両方に置く
窓口は、本人のためだけでなく、受け入れる上司や同僚のためにも必要です。迷ったときの相談先がないと、気を遣いすぎたり、何も言わずに距離を置いたりしやすくなります(この記事の整理です)。
- 本人の窓口:日々の相談先と、不在時の代わり。体調や仕事の困りごとの伝え方。
- 上司・同僚の窓口:関わり方に迷ったときの相談先(人事、産業医等、外部窓口)。
- 一覧にして渡す:誰に何を相談できるか、連絡の手段、不在時の代わりを一覧にして、関係者に渡す。
窓口を一人に集中させすぎないことも、運用のポイントです。その人が不在のときに、相談先がなくなるためです。
共有すること・しないこと
健康情報の扱いについて、資料には次の記述があります。手引きは、健康情報を個人情報のなかでも特に機微な情報とし、特定の部署で一元管理して、職場復帰支援に関わる者が責務を遂行するうえで必要な範囲に限って提供するとしています。疾患名は誤解や偏見を招きやすいため、慎重に扱うことも示されています。厚生労働省の指針(労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針、https://www.mhlw.go.jp/content/000922318.pdf)は、心身の状態の情報を取り扱う者とその権限・範囲を、取扱規程で定めるとしています。
一方、同僚へ何をどこまで伝えるかについては、手引きにも指針にも、具体的な範囲は細かく書かれていません。次の表は、資料の考え方を踏まえた、この記事の整理です。実際の取扱いは、自社の規程と、社労士・産業医などの専門家の意見に沿って決めてください。
| 区分 | 内容の例 | 考え方 |
|---|---|---|
| 共有する(業務上必要な範囲に限る) | 勤務時間と休む時間帯、残業・出張の扱い、担当業務の変更とその期間、連絡の窓口と代わりの担当、困ったときの相談先、見直しの節目 | 同僚が仕事を進めるために必要な情報に限る |
| 共有しない(原則) | 診断名・症状・治療・服薬、休職前の経緯や原因の推測、家族の事情、共有に同意のない本人の話 | 健康情報は機微な情報。必要な範囲を超えて広げない(手引き) |
| 事前に本人と決める | 共有する範囲、伝える人、伝え方(文面)、聞かれたときの答え方 | 本人の納得を前提にする(この記事の整理) |
同僚に休職の理由を聞かれたときは、上司や同僚が推測で答えず、あらかじめ本人と決めた言い方で答えます。たとえば(架空の例です)、「体調を整えて戻ってきました。仕事では分担が変わっている部分があるので、困ったことがあれば○○さんに相談してください」のように、仕事の連絡と相談先に絞った言い方を、本人と一緒に決めておきます。本人が自分で話すかどうかは、本人が決めることです。
本人が共有に同意しない範囲があるときは、その範囲を広げません。共有できる範囲で、分担と窓口を決めます。
上司・同僚の日々の関わり方
関わり方の困りごとは、2つの方向で起きます(この記事の整理です)。
- 気遣いが過剰になる:仕事を取り上げすぎる、頻繁に体調を尋ねる、腫れ物に触るような態度になる。本人が居づらくなることがあります。
- 何も伝えない:仕事の変更が共有されず、依頼が混乱する。本人が孤立することがあります。
体調を尋ねるより、仕事の連絡事項を明確に伝えるほうが、受け入れる側も本人も動きやすくなります。気づいたことは、「遅刻が増えた」「会議で発言が減った」のように、見たことをそのまま窓口に伝えます。原因や病状の推測は加えません。声かけの例(架空)は、「困ったことがあれば、○○さんに相談できます」のような、相談先を示す一言です。
調整を見直すタイミング
手引きは、問題が生じたときは関係者で連携してプランを変更すること、フォローアップの期間の目安を定めることを示しています。見直しの間隔の基準は示されていません。次は、この記事の整理です。
- 見直しの節目の例:復帰日の前、復帰後の最初の週、勤務条件を広げる前、繁忙期の前後、担当や体制が変わるとき、本人または上司から申し出があったとき。
- 見直しの材料:業務の状況(事実)、本人の申告、上司の観察、医学的な意見(会社が配慮を実施するために必要な部分)。人の見立てと事実は分けて残す。
- 見直しの結果:広げる、そのまま続ける、一時的に戻す、のいずれもありえる。
- 役割:上司が仕事の事実と観察、人事が手続きと記録、産業医等が医学的な意見、本人が申告を担う。最終的な決定は事業者が行う(手引きの役割分担)。
受け入れる側の負担と相談先
引き受ける側の負担は、気づかれにくいものです。負担が偏ったときの申し出先を、復職前に決めておきます。上司や人事が受け止めきれないときは、産業医等や外部の窓口に相談します。手引きは、産業医が選任されていない事業場では、人事労務管理スタッフなどが、主治医や地域産業保健センターなどの外部資源を活用するとしています。窓口ごとに対象と支援の範囲は異なるため、利用前に各窓口で確認してください。
職能療法士(作業療法士)の視点:受け入れる職場の条件を整える
受け入れる職場の条件も、職場によって違います。本人の状態、仕事、職場、生活を併せて見ると、調整を検討する材料が整いやすくなります。職能療法士(作業療法士)は、この「併せて見る」視点で、調整を検討する材料を整えます。復職の可否や病状を判断する役割ではありません。
たとえば(架空の例です。実在の支援事例ではありません)、「席の周りが騒がしいと集中が続きにくい」という話が出たとします。
- 本人の状態:周囲の音で、集中が途切れやすい日がある。通院の日は、早めに退勤する。
- 仕事の内容:電話対応と、チャットでの連絡が多い。
- 職場の環境:席は、人の出入りが多い場所にある。
- 生活の組み立て:通院の日は、夕方の仕事を残しにくい。
こうして並べると、席の位置の見直し、電話の一次対応を別の人が担う、連絡手段をチャットに寄せる、通院の日の分担を決めておく、といった調整の候補が見えてきます。どれを、どの順で試すかは、本人の希望と医学的な意見、職場の実施できる範囲を踏まえて、上司と本人で決めます。
※一般的な考え方の説明であり、効果や結果を約束するものではありません。
オキュラボは、作業療法の視点と支援を、働く人と職場が日常的に利用できるものにしていくことを目指しています。
オキュラボのメンまるについて
メンまるでは、復職前の面談に同席するとともに、オンラインリワークを通して把握した本人の状態や活動の様子、作業療法士としての所見を報告書にまとめ、復職に向けた調整を検討する材料として提供します。この報告書は、診断書や産業医等の意見とは役割が異なります。作業療法士の報告書だけで、復職の可否が決まるわけではありません。報告書の共有先・目的・範囲と、本人への説明・同意の取り方は、利用前に確認します。
サービスの詳細:https://www.occulabo.co.jp/wb_menmaru/
よくある質問
Q. 同僚に「なぜ休んでいたの」と聞かれたら、どう答えればよいですか。
A. 上司や同僚が推測で答えず、あらかじめ本人と決めた言い方で答えます。本人が話すかどうかは、本人が決めます。
Q. 本人が共有に同意しない範囲があるときは?
A. その範囲は広げません。共有できる範囲で、分担と窓口を決めます。業務に支障が出るときは、産業医等や人事に相談します。
Q. 調整は、いつまで続ければよいですか。
A. 決まった期間の基準は示せません。見直しの節目で、業務の状況、本人の申告、上司の観察、医学的な意見を並べて、続ける・広げる・一時的に戻すを決めます。
まとめ
- 受け入れる職場は、上司・人事・産業医等・本人の役割を、担当者の名前で決めておきます。
- 業務分担は、他の人が引き受ける仕事の担当と期間に加え、延期・中止・進め方の変更で対応する仕事、戻す順番、偏ったときの申し出先を、復職前に決めます。
- 健康情報は必要な範囲に限り、病名や症状は共有しない前提で、共有の範囲と言い方を本人と決めます。
- 調整は、節目と材料を決めて見直します。広げるだけでなく、続ける、一時的に戻すも選べます。
個々の労務判断は、社労士・産業医などの専門家にもご相談ください。
関連コラム:
休職から復職までの流れ|人事の対応チェックリスト https://www.occulabo.co.jp/corporate/2601/
休職中の社員への連絡|窓口・内容・本人との合意・記録の決め方 https://www.occulabo.co.jp/corporate/2730/
出典
- 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」 https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
- 厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(令和4年3月31日改正) https://www.mhlw.go.jp/content/000922318.pdf
休職者との連絡や調整の窓口を外部に置くことを考える場合は、メンまるの内容をご覧のうえ、お気軽にご相談ください。相談・見積もりは無料です。

