復職後のフォローアップ|仕事の振り返りと記録を次の調整につなげる

復職前に決めた「電話対応の交代」が実施されないまま、本人の担当する資料作成が予定より2日遅れている。復職して数週間たったころ、上司がこの状況に気づいた場面を考えてみます(架空の例です)。このとき、「本人の力が足りないのだろうか」と考える前に、確かめたいことがあります。復職前に会社が決めた調整は、実際に実施されていたのか。本人は、どの場面で負担を感じていたのか。
この記事では、復職後の確認を、本人と上司が実際の仕事を振り返り、困りごとを次の調整につなげる場にする方法を整理します。扱うのは、何を聞くか、どう記録するか、記録をどう次の対応につなげるかの3つです。上司・人事が病名や治療の詳細を一律に聞き出す場にはしません。本人が仕事上の困りごとや希望を話すことは妨げず、医学的な確認は必要な範囲で産業医等と連携します。
先に、3つの点を示します。
- 確認では、予定していた仕事と、実際に行った仕事を並べます。あわせて、復職前に決めた調整が実施されているかも見ます。仕事が予定どおりに進んでいないことを、本人の能力不足と決めつけません(この記事の整理です)。
- 記録は、本人の申告、職場の観察、医学的な意見を分けて残します。予定と実際の仕事や調整の実施状況は、職場の記録に加えて本人にも確認し、情報源を分けて書きます。
- 確認した内容は、「続けること」「変更を検討すること」「専門家に確認すること」に分け、未決定の事項には次の担当者と次回確認のタイミングを決めます。
この記事は、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(以下、手引き)の考え方を土台にしています。受け入れる職場の業務分担・共有範囲・相談窓口は、「休職者の復職を迎える職場へ|上司・同僚と共有すること、しないこと」で整理しています。この記事は、復職後の確認という一つの場面に絞ります。個々の労務判断は、社労士・産業医などの専門家にもご相談ください。
復職後の確認が「大丈夫です」の一言で終わりやすい理由
復職後の確認が形だけになりやすい理由として、次のようなことが考えられます(この記事の整理です)。
- 本人は、迷惑をかけたくない気持ちから、困りごとを小さく伝えやすい。
- 上司は、聞きすぎてはいけないと考え、仕事の具体的な場面に踏み込みにくい。
- 確認する項目が決まっていないため、毎回その場の会話になり、前回との比較ができない。
- 記録が残っていないため、次の調整の根拠になる事実がそろわない。
手引きは、職場復帰後のフォローアップとして、疾患の再燃・再発や新たな問題の発生の有無、勤務状況と業務遂行能力の評価、職場復帰支援プランの実施状況、治療状況、プランの評価と見直し、職場環境等の改善、管理監督者・同僚等への配慮を挙げています。勤務状況と業務遂行能力の評価は、労働者の意見に加えて、管理監督者の意見も合わせて客観的に行うとされています。本人の話だけでも、上司の印象だけでも決めない、という考え方です。
確認の場で並べる4つのこと
次の4つは、手引きが示す確認の観点を、上司と本人が仕事の場面で話しやすい形にした、この記事の整理です。
| 並べること | 具体的に確認する内容 | 情報源 |
|---|---|---|
| 1. 予定していた仕事と、実際に行った仕事 | 復職前に決めた担当範囲に対し、実際にどの仕事を、どのくらい行ったか。予定どおりに進まなかった仕事と、その状況 | 職場の記録・上司の観察。あわせて本人にも確認する |
| 2. 本人が感じた負担 | 続けやすかった場面、負担に感じた場面、見通しを立てにくかったこと | 本人の申告 |
| 3. 職場が確認した事実 | 勤務の状況(出勤、勤務時間、突発的な休みなど)、業務の進み具合、周囲の関わり方 | 職場の観察・記録 |
| 4. 調整の実施状況 | 復職前に決めた調整が、予定どおり実施されているか。実施されていない調整と、その理由 | 職場の記録。あわせて本人にも確認する |
手引きは、職場復帰支援プランが予定どおり実施されていない場合は関係者間で再調整すること、問題が生じた場合は関係者が連携してプランを変更することを示しています。4つ目の「調整の実施状況」は、本人の側の課題としてではなく、会社が決めた調整が実際に行われているかの確認として扱います。
予定と実際を並べるときの注意
予定どおりにいかなかった仕事があっても、それだけで「本人の力が足りない」と読まないようにします。仕事の量や期限、連絡の入り方、周囲の分担、環境など、職場の側の条件が影響していることもあります(この記事の整理です)。また、職場の記録と本人の話が食い違うこともあります。そのときは、どちらか一方を確定した事実とせず、食い違いのまま記録し、次の確認で確かめます。
質問の例:仕事の場面から聞く
次は、この記事の例です。答えにくいことは答えなくてよいことを、先に伝えます。上司・人事が病名や治療の詳細を一律に聞き出す場にはしません。本人が仕事上の困りごとや希望を話すことは妨げません。医学的な確認が必要なときは、必要な範囲で産業医等と連携します。
| 並べること | 質問の例 |
|---|---|
| 予定と実際の仕事 | 最初に決めた担当のうち、いま進めている仕事はどれですか。予定より進めにくかった仕事はありますか。 |
| 本人が感じた負担 | この期間で、続けやすかった場面と、負担に感じた場面を、それぞれ一つずつ教えてください。 |
| 本人が感じた負担 | 見通しを立てにくくて困った場面はありますか。そのとき、誰に、どう伝えるのが負担が少ないですか。 |
| 調整の実施状況 | 決めていた調整のうち、実際に使えているものと、使いにくいものはありますか。 |
| 次の確認 | 次に状況を一緒に確認するとしたら、どのようなタイミングだと負担が少ないですか。 |
上司の側からは、観察した事実を伝えます。「元気がないように見える」ではなく、「先週は定例会議の準備が予定より遅れていた」のように、見たことを仕事の事実として伝え、そのうえで本人の受け止めを聞きます。原因や病状の推測は加えません。
記録のしかた:3つに分けて、短く残す
記録は、あとで次の調整を考えるときの根拠になります。本人の申告、職場の観察、医学的な意見を混ぜずに、分けて残します(この記事の整理です)。予定と実際の仕事や調整の実施状況は、職場の観察に加えて本人にも確認し、情報源を分けて書きます。
| 区分 | 残す内容 | 避けること |
|---|---|---|
| 本人の申告 | 本人が話した負担、困りごと、希望。予定と実際の仕事、調整の実施状況について本人が話したこと。本人の言葉で | 申告の言い換えや、上司の解釈の書き込み |
| 職場の観察 | 予定と実際の仕事、勤務の状況、調整の実施状況について、職場が確認した事実。日付と事実で | 「やる気がない」「不安定」などの評価・推測。一方の話だけを確定した事実として書くこと |
| 医学的な意見 | 診断書や産業医等の意見のうち、会社が配慮を実施するために必要な部分 | 会社が配慮を実施するために必要な範囲を超えた転記・回覧、上司や人事による医学的な解釈 |
記録の例(架空の例です。実在の事例ではありません)
- 本人の申告:「午前中の電話対応が続くと、午後の資料作成に集中しにくいと感じる」。電話対応の交代が実施されていないことは、本人も把握していると話した。
- 職場の観察(上司・人事の記録):予定していた担当業務のうち、資料作成は期日から2日遅れた。電話対応は午前に集中する日が複数あった(日付は別記)。復職前に決めた調整のうち、電話の一次対応の交代は実施できていない。
- 医学的な意見:今回は新しい意見なし(診断書・意見書の原本は別に保管)。
記録の内容は、本人にも確認してもらうと、認識のずれに早く気づけます。記録は取扱いを定めた範囲で管理し、共有する相手と内容は必要な範囲に限ります。健康情報の扱いは、手引きと厚生労働省の指針の考え方に沿い、自社の規程と専門家の意見に従って決めてください。
確認した内容を、3つに分ける
確認で出てきた事柄は、そのまま積み上げず、次の3つに分けます(この記事の整理です)。
| 区分 | 内容の例(架空) | 次の動き |
|---|---|---|
| 続けること | 午前の定例会議の準備を前日に済ませる進め方は、本人も職場も進めやすい | そのまま続ける。次の確認で状況を見る |
| 変更を検討すること | 電話の一次対応の交代が実施できていない。午前に電話が集中する日がある | 上司と人事で、実施できる方法を検討する。試す方法と、確認する時期を決める |
| 専門家に確認すること | 勤務時間や配慮の内容そのものの見直しが必要かどうかで、判断が分かれる | 産業医等に相談する。本人への説明と同意のもと、必要な範囲で確認する |
医学的な判断が必要な点は、人事や上司が決めずに、産業医等に確認します。手引きは、フォローアップで産業医等・事業場内産業保健スタッフ等が定期的な面談などを行い、主治医と連携して治療状況を確認すること、突発的な休業が想定を超える場合は産業保健スタッフ等が面接を行い、主治医と連携して対応を検討することを示しています。産業医が選任されていない事業場では、地域産業保健センターなどの外部資源も使えます。窓口ごとに対象と支援の範囲は異なるため、利用前に確認してください。
未決定の事項、次の担当者、次回確認のタイミング
確認のたびに結論が出るとは限りません。結論が出ないときは、未決定のまま流さず、次の3つを決めて記録します。
- 未決定の事項:何が決まっていないか。
- 次の担当者:誰が、何を確認する(または検討する)か。
- 次回確認のタイミング:いつ、何を見て、もう一度確認するか。
次回確認のタイミングに、全社共通の正解はありません。手引きは、具体的な頻度を示していません。フォローアップの期間の目安を定める考え方は示されていますが、その期間は主治医と連携し、病態に応じて柔軟に定めるとされています。就業上の配慮の更新時期などに合わせて行うことも示されています。毎週・毎日といった一律の頻度や、一定期間で自動的に通常勤務へ戻す前提は置かず、次のような節目と材料で決めます(この記事の整理です)。
- 節目の例:決めた調整を試したあと、担当や体制が変わる前後、繁忙期の前後、就業上の配慮を更新する前、本人または上司から申し出があったとき。
- 材料:予定と実際の仕事、本人の申告、職場の観察、医学的な意見(必要な部分に絞る)。
- 結果:続ける、変更する、専門家に確認する、のいずれもありえます。調整を広げる方向だけを前提にしません。
負荷や配慮の水準を見直すときの考え方として、手引きには、過度な業務軽減がかえってストレスを高める可能性があること、労働負荷を段階的に元へ戻す配慮が重要であることが示されています(職場復帰支援プランの作成段階の記載の紹介です)。これは必要な配慮を減らす意味ではありません。実際の調整は、本人の希望、医学的な意見、仕事の条件に合わせて決めます。
確認が止まる、うまくいかないとき
- 本人が話しにくそうなとき:質問を仕事の場面に絞り、答えなくてよいことを伝え直します。一度で決めず、別の機会や、別の相談先(人事、産業医等、外部窓口)も用意します。
- 調整が実施できていないとき:本人の課題とせず、会社が決めた調整が実施できていない事実として扱い、実施できる方法に見直します。
- 医学的な判断が必要そうなとき:人事・上司が判断せず、産業医等に確認します。
- 急な状態の変化が心配されるとき:通常の確認とは別に、産業医等・主治医・社内の緊急時の手順に沿って対応します。
- 上司や同僚の負担が偏っているとき:手引きは、管理監督者や同僚等に過度の負担がかからないよう配慮することが望ましいとしています。偏りが出ていれば、分担の見直しを検討します。
職能療法士(作業療法士)の視点:仕事・生活・環境を整理する
同じ「午後になると集中しにくい」という言葉でも、背景は人によって違います。本人の状態、仕事の内容、職場の環境、生活の組み立てを併せて見ると、検討できる調整の候補が見つかりやすくなります。職能療法士(作業療法士)は、仕事・生活・環境を整理し、調整を検討する材料を提供します。診断などの医学的判断は医師が担い、復職の最終決定は医学的な意見を踏まえて事業者が行います。
たとえば(架空の例です。実在の支援事例ではありません)、確認の場で「午後に資料作成が進みにくい」という話が出たとします。
- 本人の状態:午前の電話対応のあと、午後に疲れが残りやすいと感じている。
- 仕事の内容:午前に電話対応が集中し、午後に資料作成の期限がある。
- 職場の環境:電話が鳴りやすい席で、一次対応を代わる人が決まっていない。
- 生活の組み立て:通院の日は、午後の時間を確保しにくい。
このように整理すると、電話の一次対応の担当の見直し、資料作成を午前の静かな時間に置く、通院の日の担当を事前に決めておく、などの候補が見えてきます。どれを、どの順で試すかは、本人の希望と医学的な意見、職場の実施できる範囲を踏まえて決めます。試したあとに確認し、必要に応じて見直します。
※一般的な考え方の説明であり、効果や結果を約束するものではありません。
オキュラボは、作業療法の視点と支援を、働く人と職場が日常的に利用できるものにしていくことを目指しています。
オキュラボのメンまるについて
オキュラボのメンまるでは、職能療法士(作業療法士)が、仕事と生活を両立できるよう、生活構築を支援します。メンまるは、産業保健的な窓口の機能に、オンラインリワークと復職後の定着支援を組み合わせ、状態に合わせて従業員に一貫して伴走するサービスです。健康情報の共有先・目的・範囲、本人への説明と同意の取り方は、利用前に確認します。復職の可否や就業上の配慮の最終的な決定は、主治医・産業医等の医学的な意見を踏まえて、事業者が行います。
よくある質問
Q. 本人が「大丈夫です」としか答えないときは?
A. 質問を、仕事の具体的な場面に変えてみてください。「予定していた仕事のうち、進めにくかったものはありますか」のように、仕事ごとに聞きます。答えが出ないことは、未決定の事項として記録し、次の担当者と確認のタイミングを決めます。
Q. 確認は、どのくらいの頻度で行えばよいですか。
A. 手引きに具体的な頻度の記載はなく、全社共通の正解は示せません。本人の状態、仕事の状況、医学的な意見を踏まえて決め、節目で見直します。
Q. 職場の記録と、本人の話が食い違うときは?
A. どちらか一方を確定した事実としません。食い違いのまま情報源を分けて記録し、次の確認で確かめます。
Q. 医学的な意見が必要かどうか、自分では判断できないときは?
A. 人事や上司が判断せず、産業医等に確認します。産業医が選任されていない事業場では、地域産業保健センターなどの外部資源も使えます。窓口ごとに対象と支援の範囲は異なるため、利用前に確認してください。
まとめ
- 復職後の確認は、「大丈夫ですか」で終わらせず、予定していた仕事と実際の仕事を並べ、復職前に決めた調整が実施されているかも見ます。
- 記録は、本人の申告、職場の観察、医学的な意見に分けて短く残します。予定と実際の仕事や調整の実施状況は、本人にも確認し、一方の話だけを確定した事実にしません。
- 確認した内容は、続けること、変更を検討すること、専門家に確認することに分け、未決定の事項には次の担当者と次回確認のタイミングを決めます。
- 確認の頻度や期間に一律の正解はなく、一定期間で自動的に通常勤務へ戻す前提は置きません。医学的な判断は産業医等に確認し、最終的な決定は事業者が行います。
個々の労務判断は、社労士・産業医などの専門家にもご相談ください。
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出典
- 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」 https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
- 厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(令和4年3月31日改正) https://www.mhlw.go.jp/content/000922318.pdf
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