人的資本経営と「働き続けられる職場」|オキュラボが大切にする支援の視点

人的資本経営という言葉は聞くが、人事の現場では何から手をつけるのか。
人を「コスト」ではなく「資本」として考える、という説明は多くあります。一方で、メンタル不調や休職が出たとき、その人が働き続けられるかどうかには、本人の状態に加え、仕事内容や職場環境、日々の対応も関わります。
この記事では、人的資本経営の考え方を短く確認したうえで、「働き続けられる職場」のために会社が決めておくことを、作業療法の視点を交えて整理します。
1. 人的資本経営とは
- 経済産業省は、人的資本経営を、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方と説明しています(経済産業省「人的資本経営」ページ)。
- 同ページでは、「人材版伊藤レポート」(2020年9月)と「人材版伊藤レポート2.0」(2022年5月)が、考え方や実践の手がかりとして示されています。
- 人的資本経営に取り組んだからといって、業績や企業価値が上がるとは限りません。この記事も、効果を約束するものではありません。
この記事では、人的資本経営の中でも、人が力を発揮できる条件をどう整えるかに焦点を当てます。会社が必要とする仕事や役割と、本人の希望・状態を照らし合わせ、仕事の進め方や働く環境を調整することを、現場の実務として考えます。これはこの記事の整理であり、制度上の要求事項ではありません。
2. 人が力を発揮できる条件を、現場でどう整えるか
「働き続けられる職場」は、同じ職場への復帰や勤務の継続を、目標として押しつけるものではありません。本人の希望を聞いたうえで、休養、仕事内容、配置、働き方の見直しも含めて、本人と一緒に検討します。
調整は、たとえば次の順で考えます。
- 会社として必要な仕事・役割:その部署やチームで、何を、いつまでに、誰が担う必要があるか。
- 本人が力を発揮するうえで困っている条件:業務の量や進め方、職場の環境、生活のリズムなどを、本人の希望も聞きながら整理する。
- 調整の検討:休養や医療的な評価の必要性を踏まえ、仕事内容、配置、働き方の見直しを、本人と会社で検討する。
- 調整を試した後の確認:本人の状態、負担、仕事の進み具合を、誰が、いつ、どの頻度で確認するか。
- 見直しの判断:確認の結果を踏まえ、調整を続けるか、変えるか。必要に応じて、産業医や主治医の意見も踏まえる。
休職から復職までの流れは、「休職から復職までの流れ|人事の対応チェックリスト」で扱っています。この記事では、手順は繰り返しません。
3. 人事の取り組みを、個人と職場の両面で見る
個人への支援と、職場全体の見直しは、分けて考えます。個人の状態に関わる情報は、本人の同意の範囲で、必要な人だけが扱います。職場の見直しには、個人が特定されない形の情報を使います。
- 個人への支援:本人の状態に合わせた相談、休養、調整。
- 職場全体の見直し:仕事の量、役割、進め方、人間関係、働き方のどこに負担が集まっているかを見る。
4. 作業療法の視点:本人の状態だけでなく、仕事・職場・生活を併せて見る
ここでは、本人の状態・仕事・職場・生活を併せて考えてみます。
同じ「集中できない」という困りごとでも、検討できる調整は人によって違います。休養や医療的な評価の必要性を踏まえながら、仕事の内容と役割、職場の環境、生活の組み立てにも、調整できる点がないかを考えます。
たとえば(架空の例です。実在の支援事例ではありません):
「異動後、会議が増えてから、資料づくりが進まなくなった」という相談があったとします。
- 本人の状態:疲れが抜けず、集中が続かない。
- 仕事の内容と役割:会議が増え、まとまった作業時間が取れない。
- 職場の環境:席が通路側で、声がかかりやすい。
- 生活の組み立て:帰宅後に休む時間が取れず、睡眠が不規則。
このように見ると、休養や医療的な評価の必要性を踏まえながら、会議の入れ方、作業時間の確保、席の位置、生活の中の時間の使い方など、検討できる調整が複数見つかります。どれを、どの順で試すかは、本人の希望と状態を踏まえて決めます。
※一般的な考え方の説明であり、効果や結果を約束するものではありません。
5. 専門職が関わる意味
人事や上司だけで、本人の状態、仕事、生活を併せて見るのは、負担が大きい場面があります。職能療法士(作業療法士)は、面談や生活の記録を通して、仕事の負担によって普段の生活に無理が生じていないか、日々の活動の目的や進め方に困っていないか、周囲と連携するうえで支障がないかを、本人と一緒に整理します。そのうえで、本人と会社が調整を検討するための材料をまとめます。
これは、本人の理解力や協調性を判定するものではありません。本人の状態に加え、仕事の量、説明の分かりやすさ、役割、周囲の支援も併せて見ます。
医学的な評価や診断は医師が行い、仕事内容・配置・働き方の最終的な判断と調整は会社が行います。専門職の関わりだけで結果が決まるわけではなく、本人、会社、医療の役割を分けたうえで、検討の材料を整えることが役割です。
オキュラボのメンまるについて
オキュラボのメンまるでは、職能療法士(作業療法士)が、仕事と生活を両立できるよう、生活構築を支援します。
メンまるは、産業保健的な窓口の機能に、オンラインリワークと復職後の定着支援を組み合わせ、状態に合わせて従業員に一貫して伴走するサービスです。
休職者との連絡・面談・調整、アプリを用いた生活構築の伴走とモニタリング、オンラインリワーク、復職後の定着支援を行います。必要書類は、作成の提案はメンまるも行いますが、最終的な管理は人事が行います。最初の同意の取得は、会社の担当者が行います。健康情報の共有先・目的・範囲、本人への説明と同意の取り方は、利用前に確認します。
オキュラボは、作業療法の視点と支援を、働く人と職場が日常的に利用できるものにしていくことを目指しています。
よくある質問
Q. 人的資本経営に取り組むと、休職や離職は減りますか。
減ると約束することはできません。不調が出たときの窓口、休職中の連絡、復職の準備、復職後の確認を決めておくことは、働き続けられる職場づくりの土台になります。
Q. 「働き続けられる」とは、元の職場に戻ることですか。
それだけではありません。本人の希望を聞いたうえで、休養や医療の判断を踏まえ、仕事内容、配置、働き方の見直しも含めて、本人と検討します。
Q. 小さな会社でも、できることはありますか。
相談の窓口を決める、休職中の連絡の担当を決める、外部に任せる範囲を先に考える、といったことから始められます。
まとめ
- 人的資本経営は、人材を「資本」として捉える経営のあり方です(経済産業省)。効果を保証するものではありません。
- 「働き続けられる」は、同じ職場への復帰を目標にすることではありません。本人の希望を聞きながら、調整して力を出せる形を探すことを含みます。
- 会社として必要な仕事・役割と、本人が困っている条件を照らし合わせ、調整を試した後の確認まで決めておきます。
- 本人の状態に加えて、仕事・職場・生活を併せて考えると、検討できる調整が増えます。
出典と確認日
- 経済産業省「人的資本経営」
URL:https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/
確認日:2026-10-09、2026-10-21(定義を再照合)/使った箇所:人的資本経営の説明、人材版伊藤レポート(2020年9月)・2.0(2022年5月)
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