人的資本経営と作業療法

2022年は人的資本経営元年。

今月より週一回の投稿で、人的資本経営を作業療法とウェルビーイングの観点で読み解いていきたいと思います。諸々、多様な解釈ができるところもあるかと思いますので、一つの意見、見解として解釈いただけると幸いです。

● 人的資本経営とは

 昨年より、様々なコンサルタントさんや企業様でご紹介されており、伊藤レポートの報告などもあるのですでにご存じのところは多いと思いますが、基本的なところなのでここでも少し述べておきたいと思います。

人的資本とは、「ヒト」が持っている能力を、「モノ」や「カネ」と同様の資本として捉えます。

「ヒト」にどれだけの価値を見出し、将来性も含めて投資できる資本と考えられるか?ということです。

また、「モノ」、「カネ」は有形資産と表しますが、対して無形資産と言われるものが知的財産です。「ヒト」の持つ能力や才能が企業にもたらす成果により、企業の価値や市場競争を押し上げます。

このように、「ヒト」を労働力のような消費財ではなく、無形資産として投資していく経営のことを人的資本経営といいます。

● 人的資本経営により変わる戦略指標。

「モノ」、「カネ」が投資の中心であった時代は、投資家からの評価基準も損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)が指標となっていました。それはこれからも続きます。しかし、この財務諸表上、「ヒト」は人件費として費用に換算されています。

費用、コストと捉えているうちは、削減対象になりやすくその価値が見出しづらくなってしまいます。

十分な教育を行うことでスタッフが活動をできるようになるにも関わらず、利益を生むために教育期間や費用を削減するといったことが起こります。

そこで必要になってくる考えが、人件費(給与のみではなく、福利厚生、教育等も含む)に対する投資収益率(ROI)です。

人的資本に対するROIを算出するためには、経営陣は人財戦略を立て、どの様な「ヒトへの投資」を行うかを具体的に考える必要があります。

もしかしたら、短期的には利益を押し下げるかもしれません。しかし、企業として短期、中期、長期的に計画を行うことで、投資成果を捉える必要があります。

「モノ」、「カネ」は「ヒト」が作り上げるものです。「ヒト」への投資戦略がその後の「モノ」、「カネ」の価値を決定づけます。

● 人的資本経営により変わる世の中の価値。求められる経営のパラダイムシフト

 米国オーシャン・トモ社の調査によると、米国内での無形資産が占める企業価値は1975年に17%であったものが、2015年は84%、2020年には90%にまで増加しています。

また、2018年には国際標準化機構(ISO)が人的資本の情報開示ルールを「ISO30414」として制定し、国際的なガイドラインとしました。日本が今後世界で戦える企業になるにはこのガイドラインを基準とする必要があるでしょう。また、これが日本国内でも標準となっていくため、今、何をするのかしないのかが5年後、10年後に日本国内でも持続可能な企業でいるかいないか、生き残れるかのターニングポイントとなると思われます。

よって、「人材版伊藤レポート」により発信された「人的資本経営」は、一時的なトレンドワードではなく今後の世の中の価値が大きく変化する入口となり当たり前のこととなります。

また、その中でももう一つ重要なことが社員の扱い方です。

今までは、上述いたしましたが投資する価値のある対象です。今までも「人財」として日本企業は重宝してきました。

それも大切です。ですが、今後の世の中はまた一つ思考の転換が必要になります。

「人材版伊藤レポート」でも述べられていますが、

旧来の企業と従業員の関係は「相互依存・囲い込み型」です。

ここから大きく関係性は変わらなければいけません。

「自主自律・相互選択型」

これがこれからの企業と「ヒト」のあるべき関係性となります。

2011年、東日本大震災により、日本の中での「モノ」、「カネ」に対する意識は変わりました。有限性のあるはかないものです。しかし、「ヒト」と「きずな」は無限の可能性があります。

それから約10年、世界的大流行している感染症により「ヒト」と「つながり」の重要性はまた大きくなりました。

依存➡共存

ひとりひとりの個性と主体性が重要になります。企業も「ヒト」も選び選ばれる関係性となります。お互いにそれぞれの価値を高め合い流動的な中でつながりと役割を持続する方法が必要となります。

次回以降も少しずつ、その方法等述べていきたいと思います。

まず次は、「ヒト」の価値について作業療法の観点から触れていきたいと思います。よろしくお願いいたします。